このたび、欧州特許庁が、人工知能(AI)を利用して為された発明について、AIを発明者として出願することが認められるかどうかの判断を示しましたので、簡単に紹介します。
・出願
出願1:出願番号EP 18275163 A、公開番号EP 3564144 A1、出願日2018年10月17日
発明の名称 Food container
出願2:出願番号EP.18275174.A、公開番号EP 3563896 A1、出願日2018年11月17日
発明の名称 Device and method for attracting enhanced attention
なお、出願1および2は、技術分野は全く異なりますが、出願人及び代理人が同一です。
・経緯
出願1および2は、いずれも当初、発明者が指定されていなかったため、欧州特許庁は2018年11月及び12月に「Deficiency in designation of inventor」を出願人に発送しました。
これを受けて、出願人は、2019年7月24日に「Designation of inventor」を提出しました。そこでは発明者として「DABUS – The invention was autonomously generated by an artificial intelligence」と記載されていました。出願人が同時に提出した書面では、「DABUS」は「a type of “Creativity Machine”」であり、「Creativity Machine」は「a particular type of connectionist artificial intelligence」である、と述べられていました。なお、Connectionist AIは、一般的には、ニューラルネットワーク型AIを指します。
これに対して、欧州特許庁は「Summons to attend oral proceedings」を出願人に発送し(2019年9月)、non-publicのoral proceedingsを開きました(2019年11月)。そこでは、欧州特許庁は、主に発明者の指定に関する条文(条約81条および規則19条(1))の立法趣旨から「発明者は自然人(natural person)でなければならない」との原則を主張し、更に、「DABUS」によるDesignation of inventorは、形式上欠陥があるものであり、改善されなければ出願が拒絶される、としました。
最終的に、Oral proceedingsでは、出願1および2を拒絶する決定が為されました。この決定に対しては、2か月以内ならば審判請求が可能です。出願人が審判を請求したか否か、現在のところ不明です。
今回の欧州特許庁の判断は、「発明者がAIであることが明記された出願における、発明者の要件に関する、世界で最初の各国特許庁による判断」であろう、とされています。
出願1および2の今後の動向およびこれを受けた各国特許庁の動向が注目されます。