判決:
Mylan Health Pty Ltd v Sun Pharma ANZ Pty Ltd [2020] FCAFC 116 (2020/7/3)
医薬用途発明にかかるクレーム形式として、日本では「疾患Xを治療するための物質Aを含む医薬組成物」のような用途限定を付した組成物のクレームが用いられますが、「物質Aを対象に投与することを含む、疾患Xを治療する方法」といった治療方法クレームや、「疾患Xの治療のための医薬の製造のための物質Aの使用」といったスイスタイプクレームが用いられる国もあります。日本では治療方法クレームは認められませんが、オーストラリアでは治療方法クレームもスイスタイプクレームも認められています。
本事件では、製品情報(Product Information)にクレームの適応症が記載されていない医薬品について、スイスタイプクレームと治療方法クレームの侵害が争われました。その結果、スイスタイプクレームは非侵害、治療方法クレームは侵害と判断され、クレーム形式によって侵害の成否が異なる結果となりました。
スイスタイプクレームは、製造された製品の特徴に基づきあらゆる事情を考慮して侵害を判断するとされ、非侵害となりました。一方、治療方法クレームは、製品がクレームの用途に使用されるのは合理的に予測可能であるとして、侵害と判断されました。
スイスタイプクレームは医薬品を製造販売する者に直接侵害を問える点で有効なクレームです。しかし、本事件のようにスイスタイプクレームと治療方法クレームで侵害の成否が異なる場合があることを考慮すると、オーストラリアにおいては、医薬用途発明の特許出願の際にはスイスタイプクレームと治療方法クレームの両方を記載することが重要であると考えられます。
(参考)
判決文:Mylan Health Pty Ltd v Sun Pharma ANZ Pty Ltd [2020] FCAFC 116