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【米国】域外適用が認められた事例~California Institute v. Broadcom and Apple事件~

IPニュース 2022.07.05
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判決:California Institute Of Technology, V. Broadcom Limited, Nka Broadcom Inc., Broadcom Corporation, Avago Technologies Limited, Nka Avago Technologies International Sales Pte. Limited, Apple Inc. (Fed. Cir. 2022)

判決概要:
 問題となっているチップの設計が米国で主に実施され、マーケティングおよび販売の中枢センターが米国内にあったという事情が考慮されて、当該チップの販売活動の多くが米国内で行われていたとの認定がなされ、米国に輸入されたチップだけでなく、米国外で製造販売されたチップについても、損害賠償の対象となるとの原審の判断が維持された。

原審の概要:
・原告 California Institute Of Technology (以下、「CalTech」)
・被告 Broadcom Limited他(以下、合わせて「Broadcom」)及びApple Inc.(以下、「Apple」)
・Caltechは、BroadcomのWi-Fiチップおよびそのチップを組み込んだAppleの製品が、Caltechの特許を侵害しているとして提訴したところ、原審において、被告らによる侵害が認定され、合わせて約11億ドルという損害賠償額(Broadcom 約2.8億ドル、Apple約8.3億ドル)が認定された。この損害賠償額には、Broadcomの海外関連会社が米国外のAppleのサプライヤーに販売したチップに基づくものが含まれていた。なお、米国外のAppleのサプライヤーに販売されたチップは米国内には輸入されていない。
(注:正確な数字は不明であるが、上記損害額の殆どが米国外で販売されたチップによるという情報もある)

控訴審(CAFC)の概要:
 控訴審においては、クレーム解釈をはじめとする種々の争点につき攻防が繰り広げられたが、CAFCは損害額を除いて、原審の決定をほぼ支持する判断を示した。注目を集めたのが域外適用についての判断であった。域外適用についてのCAFCの判断の概要は以下のとおりである。
・侵害法が域内に適用されるかどうかが争点ではなく、争点は関連取引が国内的なものであるかどうかである(=域外での販売が国内的なものとみなされるかどうかが重要である、の意)。
・Halo事件においては、「米国内での価格設定や契約交渉だけでは、それらの域外活動を第271条(a)の目的である米国内での販売に構成したり変換したりすることはできない」との判断が示され、「すべての必須条件を包含する売買契約の最終的な成立、及びその契約に基づく引渡しと履行を含む、販売取引の実質的な活動が、完全に米国外で行われる場合」は米国内での販売を構成しないとされている。
・しかし、これは、販売サイクルに起因するデザインウィン(design wins)が国内取引になり得ないと一律に判断するものではない。原審裁判所は、陪審員に対して、米国内で実質的な販売活動があったかどうかを強調して指導を与えており、その指導そのものに対してAppleおよびBroadcomは異議を唱えていない。
※BroadcomおよびAppleが「デザインウィンにつながる販売サイクル」が、米国内での販売を誘引する(triggerする)という誤った指導を、原審裁判所が陪審員に対して行ったと主張したことに対する判断。ここで、「デザインウィン(design wins)」とは、他社の市販品の部品に採用された自社製品(または自社製品が他社の市販品の部品に採用されること)を指す。

域外適用について:
・米国特許法271条(a)項は、米国内での行為が米国特許の侵害となることを規定するものであり、これは属地主義の点からも当然のことである。しかしながら、販売活動の多くが米国内で生じている場合には、当該販売行為は米国内のものであるとされ、製品の物理的な授受が外国で行われていても米国内の侵害行為とみなされて、損害賠償が認められることがある。
・域外適用について判断した先例としては、本判決でも引用されているHalo判決(Halo Elecs., Inc. v. Pulse Elecs., Inc.., 831 F.3d 1369 (Fed. Cir. 2016) on remand from 579 U.S. 93 (2016))がある。Halo判決では上記のとおり、米国内での価格設定や契約交渉だけでは域外適用の対象とならないとの判断を示しているが、今回の判決はこれを超える行為であれば、域外適用を認めることを明確にしたものといえる。本件では原告であるCalTechの立証活動が功を奏し、原審の陪審員が域外適用を認めるに至ったようである。
・具体的にどのような立証活動が行われたのかは判決文から定かではないが、現地代理人のサーキュラによれば、設計、シミュレーション、テスト、再加工、サンプリング、価格設定等が複数年にわたって米国内で行われていたことを特許権者が立証したことが指摘されている。

その他:
・原審で認められた約11億ドルという損害賠償額については再度審理するように命じられた。
・本件において、CAFCは、IPRのエストッペル(禁反言)に関し、IPRで申し立てられていないクレームを含む全てのクレームに働く、との判断を示したため、一時、米国内は騒然としたようであるが、その後、この判断について修正がなされ、IPRで申し立てられていないクレームにはエストッペルが働かないという、315条(e)との整合が図られた。

参考:
CAFC HP:CalTech v Broadcom CAFC判決文

(玄番 佐奈恵)

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