概要
2004年7月に日本における優先権の審査基準が補充されました。この優先権の審査基準では、基本的な考え方として、
a)請求項に係る発明が、先の出願の出願書類の全体に記載した事項の範囲内のものであるか否かの判断は、新規事項の例による。
b)・優先権の主張の効果は原則として請求項毎に行う。
c)発明特定事項が選択肢で表現されている場合、各選択肢についてそれぞれ判断する。
d)新たに実施の形態が追加されている場合は、その新たに追加された部分について優先権の効果を判断する。
が示されています。
この審査基準は、その前年に判決が出た「人工乳首事件2003年10月8日判決 東京高裁 平成14(行ケ)第539号 審決取消請求事件)」を反映しているとも言われています。
実際の事案としては、基礎出願の日と後の出願の間の引例を挙げられることはあまりないので、この新しい優先権の審査基準について考慮することはまれであると思われます。
しかし、優先権の主張を伴う出願において先の出願に記載の発明特定事項に加えて新たな請求項を作成することは通常行われており、どのような場合に優先権が認められ、あるいは認められないか考えておくことは重要です。
そこで、優先権の審査基準の内容を検討し、複合/部分優先を後の出願で優先権の効果が認められる発明について考えると共に、後願排除の効果についても検討します。
なお、EPOにおいても日本と同様に、先の出願について補正できる範囲でのみ優先権の効果を認めています。
参考文献
審査基準(優先権)
パテント2005年Vol58、No.7第3-20頁
AIPPI(2005)Vol.50、No.11、第634-646、No.12、第704-714頁
稲葉 和久