判決:Michael Kaufman v. Microsoft Corp. (Fed. Cir. 2022/5/20)
米国において、登録クレームにおける「and」の記載が「or」の意味として解釈されたCAFCの判決を紹介します。
事件概要:
特許権者であるMichael Kaufmanが、Microsoft Corp.の製品が本特許を侵害するとして、Microsoft社に対して提起した侵害訴訟事件。
ユーザインタフェース(ユーザがデータベースを操作するための操作画面)の生成方法に関する登録クレームで、
「each said mode display processes for representing, navigating, and managing data relationships」(参考訳:それぞれのモードディスプレイ処理は、データの関係を(i)示す(表示する)、(ii)ナビゲートする、および (iii)管理するためのもの)という記載があった。
被告であるMicrosoft社は、自社製品のユーザインタフェースには、(i)~(iii)の全ての処理を実行しないモード(ex.一部の処理のみを実行するモード)も含むため、構成要件を充足せず、非侵害と主張した。
結論としては、第1審(地裁)、控訴審(CAFC)ともに、特許明細書においてこの「and」がいわゆる「or」の意味で使用されていたことを主な理由として、クレーム解釈においても、狭義の「and」ではなく、「or」の意味を含むものと解釈し、被告・Microsoft社の主張を退けた。
所感:
・登録クレームにおける「and」の記載が、明細書の開示内容等を考慮して、「or」の意味を含むものとして広く解釈された、例外的な事例。
・本明細書では、「browse mode」、「search mode」、「edit mode」、「add mode」等の複数のモード毎の操作画面が例示されており、各モードで表示される操作画面が上述した(i)~(iii)の少なくとも1つの機能のみを具備することが、図面と明細書の記載から明らかであると判断された。
該当記載の一例:Additional MODE-NAVIGATION 706 to allow #edit mode# for a single table record SCROLL
NAVIGATION 708 allowing a(n end) user to navigate through all the records in a table and also allowing the user to
dynamically change the number of records contained in the webpage displayed (i.e., dynamic page-sizing)
・特許等の法律文書では、「A and B」⇒AとBの両方、「A or B 」⇒AとBのいずれか、のように、andとorを明確に区別することが通例であるが、米国等の日常会話や文書で「and」と「or」を厳密に区別せずに使用する場合もあり、今回の特許明細書でもそのような使い方がされていた模様。
・上記事例のように「and」と「or」の例外的な使用方法・解釈が存在する場合があることについても留意しておくと良いと考えられる。
(参考)
Kaufman v. Microsoft Corporation判決文
(山田 裕三)