<事件の概要>
Ericsson, Inc. et al v. D-Link Systems, Inc. et al. (2014/12/4 CAFC)
原告:Ericsson WiFiの標準規格に含まれるSEPを所有
被告:D-Link Systems他
原告が被告をSEPの特許権侵害で訴えた事件において、陪審は被告の特許権侵害を認定し、1台につき15セントのロイヤルティ相当の損害賠償金(総額1,000万ドル)を支払うよう評決を下した。この控訴審において、CAFCは、地裁がロイヤルティの割り当てについて陪審に適切に説示していなかったと判断して、ロイヤルティの裁定部分を無効であるとして差し戻した。本判決における主な判示事項は以下のとおり。
1.SEPに係る損害賠償金の裁定
SEPに係るロイヤルティ相当の損害賠償金は、当該製品の侵害部分に帰せられる価値を反映しなければならず、①標準規格全体としての価値でなく、②特許された特徴が標準規格に含められたことにより加わった価値ではなく、③SEPによる増分価値(incremental value)に基づいて裁定されなければならない。
2.SEPに係る損害賠償金の裁定の際に、ホールドアップ、ロイヤルティスタッキングを考慮すべきか否か
何千もの特許について、ある標準規格に必須である旨の宣言がなされたという事実だけでは、標準規格に準拠する企業は必然的にSEPの保有者にロイヤルティを支払わなければならないということを意味するわけではなく、ホールドアップ、ロイヤルティスタッキングが現実に生じていることを示す証拠が提示されない限り、ホールドアップ、ロイヤルティスタッキングについて陪審に説示する必要はない。
*ホールドアップ:標準規格が策定された後に、SEPの保有者が法外なロイヤルティを要求すること。
*ロイヤルティスタッキング:1つの製品が標準規格に欠かせない特許を多数実施せざるを得ず、特許を実施する者がSEPの保有者全員に対し、製品価格に対して過大なロイヤルティを支払わなければならない状況。
3.Georgia-Pacificの15要件の適用について
SEPは、RAND条件によるライセンスの誓約を負うものであり、SEPに係る損害賠償金の裁定の際には、ロイヤルティの裁定に関するGeorgia-Pacific事件で確立された要件の多くをそのまま適用することはできず、RAND条件に関連する要件のみを考慮しなければならない。さらに、これに加えてRAND条件を、選択肢ではなく義務として考慮しなければならない。
以上