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【米国】 差止仮処分と故意侵害の関係を判断したCAFC判決

IPニュース 2015.06.29
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Aqua Shield v. Inter Pool Cover Team
(CAFC No. 2014-1263, December, 2014)

1. 本判決のポイント
Seagate事件後、故意侵害の認定について侵害者に不利となる判決が出されたケース。

2. 背景
・上訴人(原告、特許権者): Aqua Shield
・被上訴人(被告、被疑侵害者): Inter Pool Cover Team
・対象特許:米国特許第6,637,160号(’160)
・伸縮可能な屋外プールまたはサンルーム用カバーに関する’160特許の特許権者であるAqua Shieldは、被疑侵害者Inter Pool Cover Teamへの訴えを、ニューヨーク東地区連邦地方裁判所に仮差止めの申請と共に提起した。地裁は、管轄権の問題と、原告の被告製品についての知識不足から、仮差止めの申請を却下し、事件をユタ州連邦地裁に移送した。
被告は、特許の一部のクレームについてのみ非侵害、特許無効の主張をするにとどまり、侵害が認定された。ただし、仮差止めの申請が却下されたことを理由に、被告の故意侵害を認定せず、ロイヤリティ相当量として、売り上げの8%($10,800)の損害を認定した。原告は、故意侵害の認定および弁護士費用等の支払いを求めてCAFCに上訴した。

3. CAFCの判断
・結論:地裁判決を一部破棄し、差し戻した。
根拠:仮差止めが、「特許の有効性や侵害に実質的な疑いがある」ことを理由に認められなかった場合には、故意侵害が認められないということはある。しかし、本件では裁判管轄の問題により仮差止めが認められなかっただけであり、上記にはあてはまらない。なぜ仮差止めが認められなかったかを精査する必要がある。地裁の認定はSeagate事件で示された故意侵害の基準に沿ったものではなく、故意侵害について再度Seagate事件に沿った認定が必要である。

4. 考察
Seagate判決に示されている基準は、原告が、被告の客観的な無謀さ(recklessness)を明白かつ説得的な証拠(clear-and-convincing evidence)によって立証するということである。
今回の判決は、仮差止めの申請が却下になったことを受けて、「特許の有効性や侵害に実質的な疑いがある」ことになり、上記の基準を満たさないと地裁が認定したことを修正したものである。仮差止めの申請が却下されれば自動的に故意侵害が認められないのであれば、仮差止めの申請が原告にとって大きなリスクとなり得る。このような事態を修正した本件のCAFCの判断は妥当であると考えられる。

Aqua Shield v. Inter Pool Cover Team_CAFC判決

以上

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