ミーンズプラスファンクションクレームに関して従来の判決例で示されていた考え方-「means」という用語が用いられていない場合には112条第6パラグラフが適用されないという強い推定が生じる-を撤回した。
そのうえで、大法廷判決は、クレーム用語に「means」が使用されていない場合、問題となるクレーム用語が十分明白な構造を規定していないこと、或いは、機能を実現するための十分な構造を規定することなく機能を規定しているということが挙証されれば、112条第6パラグラフが適用される旨、判示した。
Lighting World V. Brischwood Lighting事件のCAFC判決(2004年)において、meansを使用しない場合に112条第6パラグラフの適用を受けないという推定の方が、その逆の推定(meansを使用した場合には112条第6パラグラフの適用を受けるという推定)よりも強いという判示がなされたために、以後のCAFC判決においては、この判決に依拠した判断がなされ、meansを使用していなければ112条第6パラグラフの適用を受けないという推定を覆すことが難しくなっていた。
大法廷判決はLighting World事件で示された基準(meansを使用しない場合に生じる推定力がより強いこと)は正当性を欠くと判断してこれを撤回し、Lighting World事件以前の基準に戻した。
大法廷判決で問題となった用語は、「distributed learning control module」(その後に、for ~ingで規定された機能的な用語が続く)であった。大法廷判決は、この用語は、コンピュータテクノロジー分野でよく理解された意味を有しておらず、この限定要素は「means」を単に「module」に置き換えたにすぎない、伝統的なミーンズプラスファンクション限定としてドラフトされたものであると判断し、この用語は112条第6パラグラフの適用を受けるとした。さらに、大法廷判決は、本件の明細書にはクレームされた機能に対応する十分な構造が開示されていないと判断し、問題の用語は不明瞭であり、問題の用語を含むクレームを112条第2パラグラフに違反し無効であるとした。
大法廷判決はさらに、「mechanism」、「element」、「device」という用語も、十分に明白な構造をその用語に内在するものではなく、meansを使用するのと等価であるとしている。