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【米国】故意侵害に関する最高裁判決

IPニュース 2016.11.07
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【米国】損害賠償の増額を認めるための基準に関する連邦最高裁判決
(Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc. 事件およびStryker Corp. v. Zimmer, Inc. 事件)

[判示事項]
2016年6月13日、Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc. 事件およびStryker Corp. v. Zimmer, Inc. 事件において、連邦最高裁は、特許法第284条に基づく損害賠償の増額(三倍賠償)を認めるために必要な故意侵害の立証基準として、これまで採用されていたSeagateテストを、不当に厳格であるという理由で否定した。

[事件の背景]
1)Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc. 事件
Halo Electronics, Inc.(以下、「Halo」)はPulse Electronics, Inc.(以下、「Pulse」を特許権侵害で訴え、地裁はPulseがHaloの特許を侵害していることは認めたが、損害賠償の増額は認めなかった。CAFCも地裁の判断を支持したため、Haloは最高裁に上告した。
2)Stryker Corp. v. Zimmer, Inc. 事件
Stryker Corp.(以下、「Stryker」)は、Zimmer, Inc.(以下、「Zimmer」)を特許権侵害で訴え、地裁はZimmerが特許権を故意侵害しているとして、損害賠償の増額(三倍賠償)を認めた。しかし、CAFCはこの三倍賠償を無効にしたため、Strykerが最高裁に上告した。

[特許法第284条とSegateテスト]
特許法第284条は、裁判所は「損害賠償を三倍まで増額することができる。」と規定するが、当該規定は、どのような場合に損害賠償の増額が適当であるのかは明らかにしていない。2007年のSeagate事件(In re Seagate Technology LLC)においてCAFCは特許法第284条で定める損害賠償の増額が認められるための基準を示した(Seagateテスト)。Seagateテストでは、特許権者は以下を明確かつ説得力のある証拠(clear and convincing evidence)基準で立証しなければならない。
1)客観的な無謀さ(侵害者の行為が有効な特許を侵害する可能性が客観的に高いにもかかわらず、侵害者は侵害行為を行ったということ)
2)主観的な認識(侵害のリスクを、侵害者が知っていたか、又は知っているべきであったほどに自明であったこと)

[連邦最高裁の意見]
連邦最高裁の審理においては、Seagateテストが特許法第284条と矛盾を生じないか(whether this test is consistent with §284)が争点とされた。
連邦最高裁は、Seagateテストは特許法第284条と矛盾を生じるものであり、不当に厳格(rigid)であり、法に定められた地裁の裁量を妨げるものであるとした。その理由として、Seagateテストがすべての事件において「客観的な無謀さ」の認定を要求していること、「無謀さ」が明確かつ説得力のある証拠基準で立証されなければならないことを挙げている。連邦最高裁は、Octane Fitness事件を引用して、客観的に無謀であるか否かが顧慮されることなく、侵害者の主観的な故意の認定によって、損害賠償の増額が正当化される可能性があるとし、また、侵害の故意性は侵害時を基準に判断されるとした。連邦最高裁はまた、特許法第284条ではより高い証拠基準が選択されておらず、損害賠償の増額について「特許侵害訴訟は証拠の優越(preponderance of evidence)基準により支配される」という原則の例外にはあたらない(=証拠基準は証拠の優越である)とした。さらに、連邦最高裁は、損害賠償の増額は、典型的な侵害の場合に課されるものではなく、著しくひどい(egregious)侵害の制裁として規定されたものであるとの意見を示している。

判決文はこちら

 

以上

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