2021年12月30日付で韓国特許審査基準の改訂がなされました。主な改訂内容は、以下の通りです。
(1)特許要件に関する判断基準の改訂
(i) 選択発明の進歩性判断基準の緩和
選択発明の進歩性判断に関する大法院判例(大法院2021.4.8.宣告2019フ10609判決)の内容が審査基準に反映された。
<改訂内容>
・請求項に記載の発明の上位概念が引用発明において公知になっている場合であっても、構成の困難性が認められれば進歩性は否定されない。
・構成の困難性を検討せず、効果の顕著性の有無のみによって進歩性を判断してはならない。
(ii) 発明の説明に記載された発明の効果等に対する審査基準の強化
・医学的効果や非常識的発明の効果など、発明の効果の有無に合理的な疑いがある場合、効果の立証を要求する拒絶理由が発行され、その立証がなされない場合は拒絶決定が可能になる。
・発明の効果が、請求項に記載の発明と関連しない効果である場合に、立証資料の要請が可能になり、要請に対して立証がされない場合、審査保留または当該効果の記載を削除する職権補正が可能になる。
・構成要素として非科学的な行為を含み、社会通念を逸脱する非常識的な目的や効果を有する発明は、自然法則を利用しない発明として拒絶理由を発行することが可能になる。
(2)2021年11月18日施行の特許法改正関連事項の反映
特許法において改正された、審査官による職権補正および審査請求料返還関連の内容が審査基準に明記された。
審査請求料の返還については、
・審査着手前であれば全額返還
・最初の拒絶理由通知後、意見書の提出期間満了前に出願を取下げ、放棄する場合には、審査請求料の1/3が返還される。
(3)特許審査事務取扱規定の改定事項の反映
2021年6月23日に施行された特許審査事務取扱規定の改定事項が審査基準に反映された。
(i) 先行技術調査が依頼された出願に対する優先審査の審査着手期限が、従来の「優先審査決定通知書発送日から4か月」から「優先審査決定通知書発送日から8か月」に延長された。
(ii) 情報提供があった場合、出願人に対してその旨通知される。
(iii) 2回以上特許拒絶決定が取り消されて審査官に差し戻された出願に対しては、「特別な事由がない限り」拒絶決定をした審査官とは別の審査官に担当審査官が変更される。
(4)その他
(i) 条約優先権主張出願における先・後出願人の同一性判断基準の明確化
条約による優先権主張する出願について、基礎出願(先出願)の出願人は優先権主張出願(後出願)の出願人と、後出願の出願時に同一である(共同出願の場合は、後出願人全員が先出願人と完全に一致する)必要がある。
・先出願人全員が後出願人に含まれる場合:
先出願人の他に追加された後出願人に対しては、優先権譲渡に対する別途の書類を要求する必要はない。
・先出願人の一部が後出願人から除外される場合:
補正命令により関連書類の提出を要求することができる。
(ii) 真の発明者記載に関する審査基準の強化
真の発明者でない者を発明者とする出願に対して補正命令がなされ、補正されない場合には出願無効処分が可能となる。
(梶田 真理奈)