ドイツ特許法の改正「特許法の簡易化及び現代化に関する法律(第2次)」が、2021年8月17日の連邦法公報で公布されました。本法は、以下の6つの変更点を含んでいます。
(1)差止による救済規定の明確化(2021年8月18日施行)
139条の差止請求に関し、従来まで侵害が認定されることにより差止請求可能でしたが、本法改正により、侵害が認定されても、不釣り合いな困難性が認められた場合に限り、差止請求を免れることとなる旨が規定されました。この場合、損害賠償とは別に権利者には金銭的補償が認められます。
(2)民事裁判所での侵害訴訟と連邦特許裁判所での無効訴訟の同期(2022年5月1日施行)
83条(特許無効の手続において連邦特許裁判所が特許有効性等の決定にとって特別に重要である局面等に関して、当事者に速やかに通知する旨の規定)の通知は、当該通知が当該無効訴訟の被告への訴状送達から6月以内に侵害訴訟の裁判所にもなされるべきである旨が追加されました。
(3)営業秘密保護法の規定の特許訴訟への導入(2021年8月18日施行)
145a条の企業秘密に関し、裁判所は、原告・被告によって訴訟に持ち込まれるあらゆる情報を、それが企業秘密であるならば機密扱いにし得る旨が追加されました。
(4)PCT国際特許出願のドイツ国内段階移行期間の変更(2022年5月1日施行)
国際出願の指定官庁または選択官庁としてドイツ特許商標庁の国内段階に入るための期間が31ヶ月に延長されます。
(5)テレビ会議を用いた手続(2022年5月1日施行予定)
ドイツ特許商標庁が決定する適切な場合には、当事者はテレビ会議による審理に参加することができるようになります。ただし、そのような場合でも、物理的にその場に立ち会うことは可能です。これらの選択肢は、ドイツ特許商標庁において必要な内部技術インフラが確立され次第、利用可能となる予定です。詳細はドイツ特許庁から更に通知されるとのことです。
(6)維持年金の増額(2022年7月1日施行)
特許出願または特許の維持のための年間手数料は、緩やかに値上げされます。ドイツ特許商標庁によると、この値上げは1999年以降のインフレによる料金水準の低下を考慮したものです。料金の変更は2022年7月1日に施行されます。従って、2022年7月から12月の間にドイツ特許または欧州特許のドイツ部分について年金を支払う必要がある場合、2022年7月1日以前に支払うことができるように必要な措置を取ることが得策となります。
(新免 勝利、近田 暢朗)