2021年4月のインド知的財産審判委員会(IPAB)即時廃止に伴い、デリー高等裁判所内に知的財産部が2021年7月に設置されました。当該知的財産部では、全ての知的財産権の事案が扱われることになり、IPAB廃止時にIPABに係属していた事案も移送されました。
そして、これらの事案の取り扱いに関するルールとして、デリー高等裁判所知的財産部規則(Delhi High Court Intellectual Property Rights Division Rule、以下「規則」といいます)が、2022年2月24日に公表されました。
公表された規則の内容には、手続書類のフォーム、答弁書の提出、専門家パネルの設置、法律研究者の任命、調停、秘密保持、証拠保全、案件の統合、特許代理人の扱いなど、審判、訴訟案件に関する取り決めが含まれています。
本規則には、諸外国では既に規定されているものの、インドでは初めて明確に規定された、以下の内容が含まれています。
(1)裁判所は、略式判決を求める特定の申請がなされなくとも、自ら略式判決を下すことができる。
(2)答弁書の提出は、必要が生じた場合に、裁判所から指示があったときのみ行うことができる。
(3)同一または関連する知的財産権について複数の手続がある場合、当該手続が同一の当事者間で行われているか否かに関わらず、裁判所は、手続や審理等の統合を指示する権限と裁量を有する。
(4)裁判所は、紛争の効果的な裁定のために、専門家パネルの援助を求めることができる。
以上の通り、デリー高等裁判所に知的財産部が設置され、その運用のための規則がようやく定められたものの、IPABからの膨大な事案移送により、デリー高等裁判所での処理はしばらく全体的に遅れる可能性が高いと考えられます。