英国知的財産庁(UKIPO)は、2022年9月22日、AI関連発明の特許審査に関する実務について定めたガイダンス及び事例集(シナリオ)を公表しました。
[UKIPO HP] Examining patent applications relating to artificial intelligence (AI) inventions
ガイダンスでは、AI発明が応用AI及びコアAIの2つのカテゴリに分類され、審査上の取扱いが記載されています。応用AIの発明は、AI技術をAI以外の技術分野に応用した発明とされています。コアAIの発明は、AI技術の用途を特定するのではなくAI自体の分野を前進させる発明とされています。
事例集(シナリオ)では、各カテゴリについて、どのような発明が特許保護の対象となるかを判断する際に参考となる以下の18個の具体例が記載されています。
[1]応用AIにおいて特許保護の対象となるもの(事例(1)~(6),(10)~(12))
(1) 車両登録番号を認識するためのANPRシステム
(2) ガス供給システムの故障の監視
(3) モーションセンサーデータからの動きの分析と分類
(4) ポンプシステムのキャビテーションの検出
(5) 燃焼エンジンの燃料インジェクターの制御
(6) 心臓から出る血液の割合の測定
(10) ニューラルネットワークを使用したキャッシュ管理
(11) 継続的なユーザー認証
(12) 予測テキスト入力を備えたバーチャルキーボード
[2]応用AIにおいて特許保護の対象とならないもの(事例(7)~(9))
(7) 自動化された金融商品取引
(8) 患者の健康記録の分析
(9) 学習済みのAI分類器を使用した迷惑メールの識別
[3]コアAIにおいて特許保護の対象となるもの(事例(16)~(18))
(16) 異種計算機プラットフォームでのニューラルネットワークの処理
(17) 機械学習計算用の専用処理ユニット
(18) 機械学習に適応したマルチプロセッサトポロジ
[4]コアAIにおいて特許保護の対象とならないもの(事例(13)~(15))
(13) ニューラルネットワークの最適化
(14) ニューラルネットワークを使用した不要処理の回避
(15) ニューラルネットワークのアクティブトレーニング
今回公表されたガイダンスおよび事例集には、法的拘束力はないとされているものの、発明該当性に関する審査の予見性を高める上で実務上参考になります。
(近田 暢朗)