はじめに
EPCの規則改正が、欧州特許庁から公表されました。この規則改正は、欧州特許庁における「特許の質向上プロジェクト(”Raising the bar” project)」の一貫として導入されたものであって、2010年4月1日に施行されます。本発表では、今般の改正項目のうち、「分割出願の時期的制限」に関する改正を中心に取り上げます。同改正は、従来広く認められていた出願人の手続の自由度を大きく制限するものであることを念頭に置き、分割出願の戦略を依頼人と相談しておく必要があります。重要案件については、2010年10月1日までに予備的な分割出願を行っておくことが推奨されます。
1.分割出願の時期的制限(EPC規則36(1)(2))
(a)出願人による自発的な分割出願の場合(=自発分割)
親出願における審査部からのファーストアクション(FA)(何代もの親出願があるときはそのうちの最先のFA)から24月以内
(b)発明の単一性違反通知に対する分割出願の場合(=必須分割)
審査部からの最初の同通知を受けてから24月以内
(c)上記いずれの場合も、分割出願時に親出願がEPOに係属中であることが必要(従前どおり)
2.時期的制限違反の効果
分割出願とは扱われない。即ち、通常出願扱いとなる。
なお、手続の続行(Further processing)の対象からは除外される。一方、権利の回復(Re-establishment of rights)の適用は可能。
3.適用・経過規定
(a)「分割出願の時期的制限に関するEPC規則改正」は2010年4月1日以降に出願される分割出願から適用される。
(b)「24月以内」とする分割出願可能期間が2010年4月1日前に満了する場合、2010年10月1日まで分割出願が認められる。また、2010年4月1日に分割出願可能期間が進行中の場合、少なくとも2010年10月1日まで分割出願が認められる。
※従って、要するに、『2008年10月1日までに上記起算日が発生した出願』については、該出願が係属している場合には2010年10月1日まで分割出願が認められます。
森住 憲一