本判決は、1審被告の特許権侵害による1審原告の損害額の算定方法が争点となった事案である。具体的には、特許法第102条第2項の適用要件について争われた。
第1審では、原告が日本において特許権を実施していたと認められないとして、特許法第102条第2項の損害額の推定を認めず、特許法第102条第3項に基づき、実施料相当額の損害が認容された。すなわち、特許法第102条第2項の適用には、特許権者自身が特許発明を実施していることが必要であると判断された。
本判決では、特許法第102条第2項の適用には、特許権者自身が当該特許発明を実施していることを要件とするものではなく、特許権者に、侵害者による特許権侵害がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、同項の適用が認められると解すべきであるとして、同項に基づき、損害額を算定した。また、推定の覆滅について、特許賢者と侵害者の業務態様等に相違が存在するなどの諸事情は、推定された損害額を覆滅する事情として考慮するとされたが、本件では推定の覆滅は認められていない。