2015年1月21日、Hana Financial v. Hana Bank事件において、連邦最高裁は、商標のいわゆる「Tacking」理論適用の判断は、裁判官ではなく、陪審が行うべき旨判示した。
「Tacking」とは、商標権者の使用する商標の態様が僅かに変更された場合、変更後の新しい商標についても、変更前の古い商標の優先権(先使用)を依然として主張できる、とする理論である。この場合、両商標が「法的等価(legal equivalents)」であること、が必要とされる。この度、この「法的等価」であるか否かの判断は陪審によるべき、と判断した第9巡回控訴裁判所の判断を、最高裁が支持した。
被告である韓国の金融機関Hana Bankは、1991年に社名を「Hana Bank」に変更して、1994年に国外居住者向けに金融サービスを開始。その際、米国における広告にて、「Hana Overseas Korean Club」を英語及びハングルで、「Hana Bank」をハングルで表示した。その後、2000年に「Hana Overseas Korean Club」を「Hana World Center」に変更し、2002年に米国にて「Hana Bank」の名称で銀行営業を開始した。他方、原告であるカリフォルニア州法人Hana Financialは、1994年に設立し、翌1995年、「Hana Financial」につき商業的使用を開始した(さらに1996年にピラミッド図形付きの「Hana Financial」につき連邦登録を取得)。被告は、「Tacking」理論の適用を理由に「Hana」の文字について先使用であるとし、商標権侵害の主張を否定した。連邦地裁は、被告の商標権侵害を認めるサマリージャッジメントを下したが、第9巡回控訴裁判所は、先使用について、重要な事実に関する真正の争点があったとして、これを覆した。
最高裁は、判決文中において、「Tacking」は、通常の購入者又は消費者の視点で判断するべきものであって、陪審員の知識に馴染むことを理由としている(ただし、事実が正当化する場合は、裁判官がサマリージャッジメントにて、又は法律論として判断する余地がある旨述べられている。)。原告側は、「Tacking」の判断は、将来のケースにおいて依拠されるから、陪審にその判断を委ねることにより、予見可能性を失うことなどを反論したが、拒絶されている。
「Tacking」理論における「法的等価」テストは、事実認定と法的判断が混合した判断であり、本判決は、原則が裁判官か陪審のいずれにあるか明示された点に意義がある。その判断が陪審の手に委ねられる場合、より一般需要者の視点や市場常識に適った判断が期待される一方で、訴訟活動におけるテクニックや陪審員の理解を助けるための証拠をいかに収集するかがキーとなり得る。