上海知的財産研究所「2014年度中国における最も研究価値のある知財判例・選定結果トップ10」より以下の判例3つを抜粋して紹介する。
1. 奇虎vs.??(テンセント)市場支配地位の濫用をめぐる係争事件
奇虎社は、テンセント社及びテンセントコンピュータ社が市場の支配的地位を濫用するとして、テンセント社を相手取って裁判所に提訴した。広東高裁の一審では、奇虎社の全ての訴訟請求を退いた後、奇虎社は上訴した。最高裁の二審では、市場シェアや関連市場での競争状況などの様々な面の要素を総合的に考慮して、テンセント社が関連市場において市場の支配的地位を有しないと認めた。最終的に、最高裁は上訴を退き、原審判決を維持した。
2. 「鉅鋭事件」集積回路のレイアウト設計を巡る係争
鉅泉社は、ATT7021AU集積回路のレイアウト設計の専用権を保有している。鋭能微社は、鉅泉社の許諾を得ずに、ATT7021AU集積回路の「デジタルグランドオービットとアナロググランドオービットとをつなぐレイアウト」及び「独立昇圧器回路レイアウト」と実質的に類似しているレイアウト設計を使用するRN8209、RN8209Gチップを生産、販売している。鉅泉社は、鋭能微社がその集積回路のレイアウト設計の専用権を侵害していると考えた。上海高裁は二審判決では、鋭能微社が案件に係るレイアウト設計の回路原理を分析した上で創造した新たな設計ではなく、案件に係るレイアウト設計の2つの独創的箇所について複製をしており、且つ、該部分の設計はリバース・エンジニアリングによって得られたのではないので、鋭能微社の行為が「集積回路レイアウト設計保護条例」23条でいう「リバース・エンジニアリング」に関する規定に当たらない、と認定した。鋭能微社は、「類似する部分がチップ全体の面積に占める比例が極めて低いため、両レイアウト設計は実質的に類似しない」と主張した。この主張に対して、上海高裁は、集積回路レイアウト設計に占める比例が極めて低い非コア部分のレイアウト設計の独創性も法的保護を得るべきである、と指摘した。また、上海高裁は、鋭能微社が生産、販売しているチップには、案件に係るレイアウト設計の独創性を有する部分が含まれており、前述した2つの独創的箇所について言えば実質的に類似しているため、鋭能微社の行為が鉅泉社のレイアウト設計の専用権を侵害していると認定すべきである、と指摘した。
3. ノキアvs.華勤通?特許権侵害係争事件
ノキア社は、「データ転送選択方法」の発明の特許権者である。ノキア社は、華勤社が販売している携帯電話が、ノキア社の特許権を侵害するとして華勤社を相手取って裁判所へ提訴した。審理中、ノキア社は請求項7に基づいて保護範囲を確定することを主張した。上海市高等人民法院は、終審で、案件に係る特許の請求項7の構成要件5が単に該構成要件が実現しようとする機能を記載しているだけで、機能的用語で限定した構成要件に該当しており、且つ、当業者は請求項、明細書、図面を読むことで、直接且つ明確に該構成要件の技術内容を確定できないため、これに基づき、案件に係る装置を技術内容が明確でない純粋な機能的限定装置と見なした。最高人民法院法解釈[2009]21号第4条の規定に基づき、技術内容が明確でない機能的限定性の構成要件を特許法の保護範囲から除外すべきであるので、ノキア社がこれを基に権利主張することはできず、権利侵害の訴えが成立しないと認定した。