中国最高裁判所は、2015年中国裁判所10大知的財産判例(10大知的財産判例)と、2015年中国裁判所知的財産典型判例50(知的財産典型判例50)を公表した(2016年4月21日)。中国最高裁判所は、2009年から10大知的財産判例と知的財産典型判例50を公表している。
2015年10大知的財産判例のうち、8件が権利侵害等の民事事件、1件が行政事件、1件が刑事事件であった。民事事件のうち、1件が特許権、2件が意匠権、3件が商標権、2件が著作権に関する事件であった。行政事件は特許無効審判の審決取消事件であった。刑事事件は商標虚偽表示罪に関する事件であった。
2015年10大知的財産判例中の意匠権に関する判例の一つは、日本企業と中国企業との間で争われた事件であった。この事件では、日本企業が中国企業に対して、意匠権侵害に基づく損害賠償請求訴訟を提起した。中国企業は、権利非侵害確認請求訴訟を提起し、後に同訴訟中で経済損失等に対する損害賠償請求を追加した。なお、中国企業は意匠登録無効審判を請求したが、同審判の審決取消訴訟は請求不成立で確定した。最高裁判所は、中国企業の権利非侵害を認めた原審の判断を支持し、日本企業に対して経済損失に対する賠償として1600万元の支払を命じた。
2015年知的財産典型判例50のうち、44件が民事事件で、4件が行政事件、2件が刑事事件であった。民事事件のうち、6件が特許権、18件が商標権、10件が著作権、10件が不正競争防止法に関する事件であった。行政事件のうち、1件は特許無効審判の審決取消事件であり、残りの3件は商標無効審判の審決取消事件等であった。刑事事件のうち、1件は商標虚偽表示罪に関する事件で、1件は著作権侵害罪に関する事件であった。
(弁理士 前堀義之)